15.どこまで似ている双生児
性格と行動の不思議
2000年12月7日         発表者 青山明日香   司会者 坂下慎太郎
 
遺伝と環境
 性格の形成に影響を与える要因として、古くから遺伝か環境かと論ぜられてきた。一方では、性格は生まれつきのもので、ほとんど変わらないものだとし、他方では、人の心はもともと白紙のようなもので、どんな家族に生まれ、どのように育てられたかかによって決まってくると考えた。それについては、遺伝情報はある環境条件が整ったときにはたらき、発育の時間や環境によって制御されている。そしてその現れた遺伝情報は、可能性の限界を示しているが、可能性の中でなにがでてくるかは、学習によって決まる。という「相互作用説」が主流である。
 
 
 そこで、性格の形成がどのように環境によって影響を受けるのかを研究する方法として双生児研究法がよく用いられる。
 
 
双生児法とは?
 性格が遺伝と環境のどちらに支配されているのかを研究するのに、一卵性双生児と二卵性双生児の間に差があるかどうかで決定しようとする方法である。つまり、遺伝子的に同一である一卵性双生児間の差と、兄弟と同程度の遺伝子関係しかない二卵性双生児間の差を比較する。このとき、前者と後者とで同じくらいの値であるなら性格は環境による影響を強くうけていることになり、逆に一卵性双生児ではよく似ているのに二卵性双生児ではそれほど似ていない場合には遺伝に強く支配されていることになる。簡単に言うと一卵性双生児と、二卵性双生児の間に差があるとき、また一卵性双生児の間に差がないとき、遺伝の影響を受けるということである。逆に、一卵性双生児と二卵性双生児との間に差がないとき、また一卵性双生児間に差がある時、環境の影響をうけるということである。
 
 
 双生児法を用いた研究は今まで数多く行われてきた。
 エックレの研究によると、一卵性双生児の多くは、二人が一致して固定型(狭くて固着的な注意と強い固執性を持つ)にあるか、流動性(広く流動的な注意と弱い固執性をもつ)の側にあり、二卵性の多くはその双方に分かれていた(差があった)。つまり、かなりの遺伝性が認められたのである。さらに、能動性(元気の良さ、充実感などと関係深い)も遺伝する素質富止められた。
 東大の貢献救助が行った実験では、活動性(精力的に動き回るか、物静かで控えめな方であるとか、好奇心旺盛過、それとも消極敵かというような点)、根本気分(暖かみのある人だとか、とげとげしい人などそれぞれ固有の気分)、危機的事態への対応(平然としているとか、あたふたするなど)において、いでんせいがみとめられた。
 他に、自己満足、支配欲、自信、意志力、社会的内向性、抑うつ、自我の強さ、誇示癖、知的好奇心、飲食回数、平均飲酒量などについて、遺伝と環境がいろいろな割合で関与するといわれている。また、内向性、社交性、ヒステリー、心気症、社会的道徳、安定気質、客観性、動機づけ、完成欲求、攻撃性などは、完全に環境によって決定されるとしている。
 つまり、性格の中でも遺伝の影響を受けやすい部分とそうでない部分があるということである。
 
一卵性双生児の兄弟的性格
 これまでみてきた研究結果では、一卵性双生児の類似性に目を向けてきたが、一卵性双生児が似ていない例もある。一卵性双生児の遺伝的な条件は同じだとしたら、性格の違いは環境的条件の違いによるものだろう。同一家庭の中に生じる環境の差として、家庭の兄弟の区別をつけた育てかたがある。家庭での扱い方と双生児本人たちの兄弟的な性格の違いとの相関を見たところ、兄弟の区別を付けて扱っている家庭の双生児には、明らかに一般の兄弟と同じような兄弟的性格がみられた。 このことからも、性格は遺伝条件のみによってつくられるものではないということがわかる。
兄的性格弟的性格
ききわけがある依存心が強い
持ち物の始末がよい欲しいものはすぐ言う
慎重である甘ったれである
根気がある調子に乗りやすい
自分のことは自分でするおもしろいことを言う
けじめがあるほがらかである
小さいことでも気にする気がちりやすい







 
      表1 双生児にみられる兄弟的性格
 
感想
 今回、性格は、遺伝だけでも、環境だけでもなく、その両方が相互しあって作られるということがわかった。そして、遺伝しやすい部分、そうでない部分もわかった。自分の親をみていて、似ていると思う部分はきっと、遺伝しやすい部分なのだろうとおもう。逆に、環境の影響を受けやすい部分は、自分次第で変わっていく部分なのだとおもう。自分の性格を見つめ直したとき、いやな部分が環境の影響を受ける部分なら、自分の意志と、選ぶ環境で変えていけるということ思った。
 
   参考文献  「性格はいかにつくられるか」 詫摩 武俊 著
         「わたしそしてわれわれVer.2」 大坊 郁夫 編著
         「双生児とパーソナリティ形成」 天羽 幸子 著
 
授業で出た質問
「似ている」という基準は何か?
>問題とする形質が双生児中、二人とも有する場合を一致、一方だけの場合を不一致として、一卵性と二卵性について、それぞれ一致率を算出し、両者間出、比較し、一卵生の一致率が統計的に有意かどうかをみる。
双生児間で同じ環境でも、環境の捉え方によって、違いが生じるのではないか?
>本文中の双生児の兄弟的性格をみてください。
遺伝の影響をうけにくい部分とは?
>本文にのせました。
二卵性双生児を使う理由(年齢に差のある兄弟ではダメなのか)?
>しらべることができませんでした。