第1章 デジタル社会の展望
1-1 高度情報立国
情報産業が21世紀の日本の発展を決める。1-2 情報リテラシー
社会基盤(infrastracture)
20世紀は工業化社会
- 経済成長と豊かな市民生活、(高速)道路、物流、電力、電話、学校
- 通信=電話回線、1K〜1Mbps (例:PHSは64Kbps)
- 大量生産・大量消費、地球環境問題、平和問題
情報産業の驚異的発展
- コンピュータ・メーカを中心に、関連業界のすそ野を拡大(→図1−1)
- 例:マルチメディア業界の市場規模は50兆円
- 科学技術の発展に「利用」が付いて来る?
- 例:通信=光ケーブルや超マイクロ波で、1G〜1Tbps
- すべての人々は何らかの形で情報産業や情報技術と係わりを持っている。
図1-1 情報産業
工業化社会のリテラシー(literacy)は、読み・書き・算盤1-3 デジタル時代の情報技術者
- 市民生活(労働するため)に必要、義務教育で(から高校進学率98%へ)
- 情報メディアは、新聞と放送などのマスメディア
情報化社会では、情報について開かれた社会であるためには、誰もが情報リテラシーを習得する必要がある。では「情報リテラシー」とは何か。
- 情報処理機器の利活用能力
- 情報へのアクセスと情報処理の知識 → 1993年「情報基礎」(中学・高校)、2003年から高校で必修化「情報A,B,C」と選択「専門教科の情報11科目」
- 社会で主体的、生産的、指導的な働きをする能力
- 情報メディアの中心は、アナログからデジタル、マスから個人と双方向、文字メディアからマルチメディアへ
- 影の部分(情報の歪曲・偏向、情報洪水、情報侵害、情報犯罪) → 安全性管理、知的所有権、利用者保護(法律や行政の知識)
社会にとって人材育成は最も重要な課題
1969 通産省・情報処理技術者試験
(第1種、第2種からはじめ、システム監査、オンラインの追加へ)
1970 大学で「計算機科学」や「プログラミング」教育
1985 大学に、経営情報、環境情報、社会情報、文化情報などの新学科
1994 中学「技術家庭」、高校「数学C」で、プログラミング基礎
1994 通産省・情報処理技術者試験に12種新設(新たな情報技術への急激な変貌に対応し、25年ぶりに見直し → 図1-2)
1999 高校のインターネット接続が50%以上に
2001 通産省・情報処理技術者試験の見直し(基本情報処理←第2種,ソフトウェア開発←第1種など)情報システムの位置づけが飛躍的に向上(社会と経済、企業活動の根幹をなす)
インターネットやマルチメディアが浸透し、情報が経済的、文化的価値をもつ
情報システムが価値の創造を決める。
図1-2 通産省・情報処理技術者試験の区分 情報システム
構築プロセス新しい人材像 メーカー ユーザ 企画 企画分析 システムアナリスト プロジェクトマネージャ 情報
セキュリティ・
システム
アドミニストレーター(SAD),
上級SAD,
初級SAD要求定義 ソフトウェア開発技術者 TE
(ネットワーク)TE
(データベース)TE
(埋め込みシステム)アプリケーション
エンジニア基本設計 詳細設計 基本情報技術者 プログラムの
設計
開発
テストシステムの
評価・テストシステムの運用管理 TE(システム管理) ユーザ教育 ユーザ教育エンジニア システム監査 システム監査・システムアナリスト 新しい人材像
情報処理のキーワード
- システムアナリスト ← SEの再定義、最も重要な能力は、情報化戦略(経営戦略)に基づく,企画分析、システム提案。問題解決のシステムコンサルタント、システム評価と勧告のシステム監査人を含む。
- プロジェクトマネジャ ← 大規模システムの構築を統括する
- アプリケーションエンジニア ← プログラマの再定義、ソフトウェア工学の知識(CASE、オブジェクト指向技術)に基づき、生産性と品質の向上に寄与できる人材。プロジェクトマネージャの指揮の下,ソフトウェア開発技術者を指揮する。
- SAD(システムアドミニストレータ) ← ユーザ側の視点で全社的な情報化を主導し,業務改革を推進する人材、エンドユーザ・コンピューティング(EUC)と業務内容、組織について十分な知識を持つ人材。初級はEUCの利用技術に重点を置く。
- ネットワーク (インターネット)( → 教科書「通信ネットワークがわかる本」)
- オープンシステム
- ダウンサイジング
- マルチメディア ( → 参考書「マルチメディア生活用語辞典」)
1-4 インターネットと情報インフラ
日本政府がインターネットに注目し始めたのは、1994年、アメリカの「情報スーパーハイウェイ構想」(全米高速通信網)の基本プロトコルに盛り込まれたこと。デジタルインフラとして光ファイバ網(加入者まで)の全国整備、2000年に20%し2005年に完了。2002年度までに超高速マルチメディア移動通信システムの実現(郵政省「情報通信政策大綱−デジタル革命による日本経済の再生」1998年8月)
ビデオ画像などの双方向通信を可能にし、医療や教育のサービス、企業の生産性の向上を目指す。 ( → 第1部 オフィスのマルチメディア、PART1 通信ネットワークの基礎知識)
家庭にも「情報コンセント」が設置され、電話・FAX、パソコンやTVなどの情報機器をインターネットに接続する。( → 第2部 家庭におけるマルチメディア)
1-5 オープンシステム
異なるメーカのコンピュータの異機種相互接続が可能になり、主要なソフトウェアが多数のメーカのコンピュータで稼働し、ユーザ指導で情報システムを構築できるような開かれた情報技術環境1-6 ダウンサイジング
オープンシステムはメーカ側の技術発展にも寄与する。
オープンシステムの必須技術オープンシステムに関する標準化(規格化)
- 情報システムの相互運用性(インターオペラリティ)
- システム拡張性(スケーラビリティ)
- 基本ソフトウェアやアプリケーションの移植性(ポータビリティ)
- 国際標準や業界標準の採用(仕様、仕様決定過程の公開制)
情報技術 国際標準や国内標準(Dejure) 業界標準(Defacto) 団体名 ISO, CCITT, JIS,ANSI OSF, UI, COSE 基本システム POSIX X/OPEN, OSF GUI X Window Open Look, Motif プログラム言語 Standard C, COBOL C, Java ネットワーク仕様 ISO-OSI Ethernet, TCP/IP データベース言語 ISO-SQL SQL LANシステム管理 ISO-CMIP SNMP
コンピュータの急速な進化が、小型化と高性能化を繰り返し1-7 情報システムの変遷メインフレーム(大型汎用コンピュータ=ホストコンピュータ); 1964年System360(IBM社); 日本も大手6(3)社が生産ハードウェアは小型化、ソフトウェアは肥大化(高機能)
ミニ・コンピュータ ; 1970年前後 PDP(DEC社)
ワークステーション ; 1973年 Alto(Xerox社PARC)
デスクトップ・パソコン(最初はマイコンとして登場)
ラップトップ
ブック(A4:ノート、B5:サブノート)
パームトップ (PDA=Personal Data Assistant) ; Newton(Apple社)やZaurus(Sharp社)半導体素子の発展(→図1−3)
最先端のコンピュータの潮流は、第5世代
非Neuman型や超並列化による、高速巨大計算や知識情報処理へ(ニューロ系やファジー系で曖昧さや感性を対象に)
ダウンサイジング=1世代前の大型コンピュータの処理能力をもつ製品を企業が100台単位で購入できる。これらのWSやパソコンを接続して企業の要求を満たす情報システムをより安く構築できる。(コストパフォーマンスの向上)
コンピュータの進化は、人間と機械のインターフェースの進化の歴史コストパフォーマンスの向上情報システムの形態(→図1−4)
ユーザ・インターフェースの「使いやすさ」を追求
ネットワークの発達による分散処理の性能向上
エンドユーザコンピューティング(EUC)の普及
- ホスト/端末型
- オンライン処理システム、TSS(実時間分割処理システム)
- 端末は専用処理用のダム端末か、ホストの仮想画面端末
- 同一メーカによるクローズシステム
- MML型 (Micro/Mainframe Link)
- パソコンの高性能化によって、業務に必要なプログラムをパソコン側で持つ分散処理システム、ホストは共有ファイルを持ちデータベースの安全性と一貫性などをDBMSで管理
- ホストはオンライン処理を要求されないので、中型のコンピュータでもよい。
- 同一メーカによるクローズシステムが多い
- クライアント/サーバ型
- 業務に必要な処理を、ユーザ側のWSとホスト側のサーバに機能分担し、LAN環境で情報資源の共有と分散処理をする。
- 標準規格を満たした製品で、LANを含めた情報処理システムを構築する。
- サーバ機能としては、ファイル(NIS, NFS), プリンタ、通信(Telnet, FTP, SMTP, NNTP, WWW), 文書処理 (Tex, LaTeX, Emacs/Mule), 画像処理
- Client/Serverの中心は、LANのネットワーク技術
- UNIX, NetWare, Mac/OS, WindowsNT
- (→ PART4の3,4; 第1部の3,6,9)